【コラム】カクタル社長のつれづれ日記 第3回
広瀬 光哉( 株式会社カクタル 代表取締役社長 )
2022年1月5日(水)

引退への思いは、本人にしかわからない

引退といえば、最近では「平成の怪物」松坂投手の引退報道がありました。 現役最後の時期、世間では「諦めが悪い」などのバッシングがあったと思います。 実は、私自身も同じようなことを思っていました。 怪物とも言われ、日本・米国であれだけの実績を残し、お金もたくさん持ち、引退後も解説やコーチの仕事で困らないのだろうに、なぜ現役を続けるのか。1軍に上がれないで2軍で悪戦苦闘する姿を見せてまで、現役にこだわらなくてもいいのではないか。そう、思っていました。でも、引退を決心するまでの悩みは、本人でないと分からないですよね。会見で家族のことを話した時の松坂の涙が、野球に対する思いの深さを物語っていたと思います。大相撲の白鳳にしても、いつまでも横綱に固執して休場を重ねているのに、「オリンピックまでやる」とか、自分の都合で言っているなと思っていました。でも、本当の気持ちは本人でないと分からないですね。

私自身、42年間勤めた会社と仕事仲間と別れる寂しさ、職務・地位・収入を失う怖さを感じて、引退を決めて実行するまでは本当に悩み、苦しみました。 当然、「まだ仕事ができる」という気持ちもあり、「もう一度、新たな施策を考えて何かを達成したい」という思いもありました。 しかし、一方では、「第二の人生設計をして、自分の夢を実現しよう」「引退して、後は後輩に譲るべきだ」とも考えていました。この時期は寝床の中で押し問答をして、悶々としていました。長い間悩んだので、退職を決めた後も「辞めたらこのモヤモヤから解放されるのだろうか」「後悔するのではないか」と不安でした。

最後のセレモニーのおかげで、心がスッキリ

スポーツ選手には引退セレモニーがありますよね。 今回、あれは本人にとっても素晴らしい区切りになるのだと痛感しました。私もいろいろな場所で「退任祝いの会」を催していただき、その都度感激して泣いていました。 そして昨年(2021年)の3月26日、午前中の株主総会で退任を最終承認され、お昼に自席に戻って社員証を返却し、 いよいよ無職となって後片付けをしていました。その時に突然社員から声をかけられ、言われるままについて行ってみて驚きました。なんと、全国で私が関係した社員・関係会社・メーカーの人たちがリアルとオンラインでずらっと集まっていて、サプライズのお別れセレモニーをやってくれたのです。当然、最後の最後の大泣きをして、挨拶ができなかったことを思い出します。

その時は感動と感謝だけで、自分の心の変化に気付かなかったのですが、 翌日の朝、愛犬と散歩していて、心がすごくスッキリしているのを感じました。「アレッ、昨日まではいろいろなことを考えて悶々としていたのに、今朝は違う」と思いました。それは最後のセレモニーのおかげでした。心の底から退任した現実を自覚でき、心の底から自分に関わってくれた全員に対して、そして42年間お世話になった会社に対して感謝して、しっかりと区切りを付けることができたおかげだと理解できました。

現役で踏ん張っている人、潔くスパッと辞める人、いろいろな人がいますが、他人が軽々しく批評してはいけないと思いました。自分が引退を体験してみて、それぞれにいろいろな想いがあると痛感しています。 次回第4回ブログは、2022年の抱負を書きたいと思います。

2022年が素晴らしい1年でありますように。
公私ともに激動の2021年の日の入りです。2022年が素晴らしい1年であることを願っています。

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