【コラム】製造業の社長に伝えたい! 第5回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2022年2月15日(火)
導入した生産管理システムを熟知しよう
生産管理システムには、業種に合わせて作られているパッケージシステムと、自社の仕様に合わせて手作りするオーダーシステムがあります。最近は様々な業種業態に合ったパッケージシステムが用意されていますので、今回はパッケージシステムについてお話しします。自社に合った生産管理のパッケージを採用できたとして、次に大切なことは何でしょうか。
私は、「そのパッケージについて熟知することだ」と断言します。「なんだ、そんなことか」という声が聞こえてきそうですが、これはとても大切なことです。
業種別のパッケージシステムの多くは、業界に固有な業務フローや業務課題に応えながら、絶えずブラッシュアップを続けて現在に至っています。つまり、磨きに磨かれているということです。ですから、ある部分を評価して、自社には合わないからといって、すぐにカスタマイズ(自社のやり方に合わせるためのプログラム修正)することは控えるべきことだと思います。
「同業他社では、そのパッケージが持つ業務フローや機能を駆使してうまく業務を回し、効果を上げている」という事実を忘れてはなりません。もし、自社の業務に合わない点があった場合は、再度、「なぜ、このパッケージはこういうつくりになっているのか」について徹底的に検証しましょう。それでもだめなら、最後の手段としてカスタマイズすればよいと思います。
これまでのやり方か、新しい考え方か
一つ例をあげて考えてみましょう。自動車部品の製造業では、内示受注と確定受注の問題が必ず出てきます。ここで苦労している会社が本当に多いのです。ある会社が「手作業で日ごと品番ごとに内示受注と確定受注を比べ、差異があれば差異数を出し、影響する資材発注数や製造指示数を変更する」という作業に、日々膨大な時間をかけていたとします。それを、そのままの流れで、生産管理のパッケージに乗せ換えられると思って導入してみたら、全く違う流れであった、としたらどうでしょうか。導入した自動車部品業向けのパッケージは、「内示受注と確定受注に変更があっても総数で辻褄が合っていれば、先の在庫で調整する」という考え方で、直近の発注数や製造指示数まで変更しない運用です。これで、「安定生産を実現している」と主張します。
果たして、これまでのやり方にこだわることと、新しい考え方を取り入れることのどちらが正しいのでしょうか。ここでの生産管理システム導入の目的は「変動する需要に製品在庫を増やさずにうまく対応すること」ですね。この目的を達成できると主張する自動車部品業向けパッケージを使いこなすためには、今までの流れとは違う考え方を取り入れる必要があります。
業務のプロである導入側の機能理解が必要
パッケージシステムの導入にあたっては、SIerの知恵を借りることも多いと思います。ここで、業務のプロである導入側がパッケージの機能についてしっかりと理解していることと、パッケージの機能を熟知したSIerが導入企業の現状業務フローを理解してパッケージに適合できる仕事の流れを考えることと、どちらが有効な手段だと思いますか。
私は、「間違いなく前者だ」と断言します。なぜなら、新しい考え方を取り入れたり、長年親しんできた業務フローを変えるためには、社内の多くの抵抗勢力(現状維持派)を説得する必要があるからです。これは難題で、外部の人間であるSIerでは到底対応しきれません。これが、「選定した生産管理システムの機能について、導入する側が熟知することが本当に大切である」と私が考える理由です。
あらためて、経営者、導入責任者の方に問います。導入したパッケージシステムのこと、熟知していますか。