【コラム】三月ウサギのDX談義 第10回
2025年4月7日

うららかな春の日、花粉症の兆候が表れる

やっと寒い冬が終わり、暖かな春の日がやってきたのを喜んだ三月ウサギは、先月の中頃に緑豊かな公園をランラン気分で飛び跳ねていました。すると、突然、鼻水とくしゃみの嵐に襲われ、家に帰ってきても、鼻水が止まらなくなりました。

他に風邪の症状はないし、「これが、悪名高い花粉症か?」と疑い、市販の花粉症薬を飲むと、なんと、鼻水がピタッと止まったのです。「できれは、これは花粉症ではなく、一過性のものと思いたい。しかし、この薬の効き目は何? やはり花粉症なのか?」と自問自答を繰り返しつつ、とりあえず、日本の花粉症の現状について調べてみました。

まずは、花粉症の復習から。花粉症は、季節性アレルギー性鼻炎の別名で、花粉によって引き起こされるアレルギー性疾患です。症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎と、目のかゆみや涙が止まらないなどのアレルギー性結膜炎、まれに喘息やアトピーの症状が出ることもあるそうです。三月ウサギは喉が弱いので扁桃腺が腫れ、鼻炎が出ていますが、目に影響はありません。

日本人の42.5%が花粉症という調査結果も

春のスギ花粉症は日本人の国民病のように言われますが、日本人の花粉症有病率はどのくらいなのだろうと思って、調べてみました。環境省の「花粉症環境保健マニュアル2022」によると、日本の花粉症有病者数は、正確なところはわかっていないそうです。ここには、1998年、2008年、2019年の3回、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査結果というのが掲載されていました。

それによると、2019年の花粉症の有病率は42.5%と推定されています。これは推定値とはいえ、驚くべき数字ですね。

世界の人々も花粉症に悩んでいる

では、花粉症の海外事情はどうなっているのでしょうか。

花粉症は海外でも昔から存在しています。日本ではスギ花粉症が有名ですが、アメリカではキク科のブタクサによる花粉症が、ヨーロッパではイネ科の花粉症が多いそうです。オーストラリアではミモザ(アカシア)が、南アフリカではイトスギなど、その土地に生えている樹木の花粉を大量に浴びることでアレルギー症状が起こるようです。

そして、世界アレルギー機構(World Allergy Organization)の2016年の報告資料によると13~14歳の子どもの花粉症有病率は、世界全体の22.1%だそうです。花粉症は自然に治ることが少ない疾患なので、年齢を重ねるほど有病者が増えることが予想され、世界でも花粉症に悩む人は増加しそうです。

花粉症は健康経営でも大きな問題に

花粉症は健康経営でも、大きな問題になっています。健康経営とは、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実行すること」で、従業員の健康に投資することは、従業員の活力向上、生産性向上につながり、それが結果的に企業の業績向上につながるという考え方です。

ここで、従業員の4割近くが花粉症かもしれず、ひどい症状に悩んでいるかもしれないという状況は、「生産性」や「企業競争力」という観点からは大きな問題です。

プレゼンティーイズムの解消が重要

健康経営の指標となる用語として、「アブセンティーイズム」と「プレゼンティーイズム」があります。

「アブセンティーイズム」は「仕事を休業・欠勤している状態」を指します。健康問題により、遅刻、早退、就業が困難なための欠勤、休職などがこれに当たります。「プレゼンティーイズム」は「出勤しているものの、健康の問題を抱えながら仕事をしている状態」を指します。花粉症、頭痛、腰痛などの体の不調で仕事に集中できない状態で働いているので、生産性の低下が問題になっています。

「アブセンティーイズム」については、従業員の病欠等で、企業側にも原因と状況が見えますし、「ストレスチェック」などで対策が取りやすい面もあります。ところが、「プレゼンティーイズム」については、人によって症状が様々なのと、実態が見えにくいので、対策を取るのも難しいという問題があります。

対策が難しい面はありますが、「プレゼンティーイズム」を解消できれば、「従業員が100%パフォーマンスを発揮する状態」を期待できるので、「花粉症」に対しても従業員に様々サポートを行う企業が増えています。

花粉症対策も、健康対策も行き着くところは同じ?

花粉症を治すにはどうしたらいいのかも調べてみましたが、薬と花粉を浴びないための対処法はたくさん出てくるものの、「これ!」といったものはありませんでした。出てくるのは規則正しい食生活、栄養バランスのとれた食事、運動、睡眠など、いわゆる普通の健康対策です。「結局ここに行き着くのか」という思いと、「健康なアスリートにも花粉症の人はいる」という思いで、ちょっと釈然としない気がします。

ITで世界が便利になり、DXで生産性が向上し、AIの進化で仕事の可能性が大きく広がる世界に生きていて、今後の変化も楽しみですが、花粉症の症状を体験して、一番重要なのは「健康な体」という認識を新たにしました。「従業員の健康が一番大切」という健康経営の考え方も、ここに根ざしたものでしょう。

三月ウサギは、今は「花粉の季節が終わるのを待つしかない」という心境ですが、自分の食生活も見直してみようと思っています。

春の白い花のカクテル
桜だけでなく、コブシ、ハクモクレンなど、白い木の花も美しい季節。生命のエネルギーあふれる春の到来を白い花のカクテルで祝いましょう。