【コラム】三月ウサギのDX談義 第2回
2023年12月11日

DX人材の幅は広く、求められるスキルもいろいろ

「DXが大事、これからはDXを推進しなくては」と叫ばれてからだいぶ年月が経っています。「うちもDXをやりたいけれど、DX人材が不足している」「社内でDX人材を育てなくては」という声もよく聞きます。しかし、「DX人材って何? どういう人?」という問いに明確に答えられる人も少ないような気がします。

そもそも、DX人材とは、どんな人でしょうか。

まず、DXの定義を確認しておきましょう。前回のコラムでも書きましたが、経済産業省の「DX推進ガイドライン」に載っているDXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 です。
そして、経済産業省のDXレポート2に載っているDX人材の定義は「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用して、それをどう改革していくかの構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材」となっています。

ふーむ、これだと、「社長もしくは経営陣で、データとデジタル技術に詳しい人」でないと当てはまらないようですね。しかし、実際は「自社ビジネスを深く理解していて、どう改革したいか明確なビジョンを描く人」と、「データやデジタル技術を駆使してそれを実現するためのシステムをデザインできる人」の協力体制が必要でしょう(両方を一人でできる人もいると思いますが)。さらに、「そのシステムを構築するための具体的な解決策を見出し、DXを実現できる人」が必要になります。そして、それぞれの段階で、現場で仕事をする人が必要ですね。これらに関わる人たち皆がDX人材なので、DX人材として求められる職種もスキルも幅広いのが現状だと思います。

現場で動く社内スタッフの人選が悩みどころでは?

段階別にDX人材を整理してみましょう。

(1)DXを主導するリーダー

DXの目的は、ビジネスを変革して企業の優位性を確立することです。企業の成長のための戦略を練り、今後の進む方向を決めるのですから、経営者、経営陣、管理職の仕事ですね。

(2)DXの企画・立案・推進者

リーダーが描く戦略や目的を理解して、その実現のためにどこをどう改革し、どんなシステムを作るか、プロジェクト全体をデザインする人。データやデジタル技術を活用する高い能力を持つとともに、会社のビジネス全体をよく知っていることが必要です。私が最近取材した中堅企業では、この重要人材はヘッドハンティングで獲得していました。

(3)DXを推進するための社内スタッフ

DX推進が決まったら、そのプロジェクトを動かすためのスタッフとして、各部署から数名が選ばれて「推進チーム」を作るという企業が多いのではないでしょうか。各社員がそれぞれのスキルを活かし、DXについての知識を蓄積しながら、システムの具体的な道筋を作るための仕事をすることになると思います。

(4)システム設計者、実際に作る人

これはエンジニア・プログラマーなどの仕事なので、企業が発注先や委託先を探し、(1)のリーダーと(2)の推進者が統括・管理するという形になるでしょう。

(1)(2)は経営陣に近い人たち、(4)はプロの集団ということで、社内で悩むのは(3)の社内スタッフの人選や育成だと思います。

コミュニケーション力とインターネット経験を大事にしたい

社員スタッフのデジタル技術やDXの知識を増やす方法は色々とあると思います。研修やセミナーを実施するとか、IT系の資格取得を支援するなど、社員の知識とスキルの底上げに努めている企業も多いでしょう。

ここで私が大事にしたいと思うのは「コミュニケーション力」と「インターネットの経験」です。大きなプロジェクトを現場で動かすということは、人を動かしたり、色々な部署と折衝したりが必要になるので、コミュニケーション力は欠かせないと思います。また、DX推進には、「急速に進歩したデジタル技術を使って物事を変革しよう」という意識が根底にあると思うので、「新しい技術が好き」「面白そうなことをどんどんやってみよう」という気持ちと親和性があると思うのです。そして、そうした気持ちの表れの一つが「インターネット利用」だと思うので、自分のブログを持っている、SNSを使いこなしている、などのインターネット活用の経験があり、ネットの良さも怖さを知っている人を社内スタッフに選ぶといいと思います。

もっとも、ネットでの活動とリアルな世界での活動を分けて、交わらないようにしたいと考えている人も多いので、社内の人材のインターネット経験を知るのは難しいかもしれませんが。

もう一つ、私がお勧めしたいのは、(3)の社内スタッフの上司にあたる人たちも、インターネットの世界を体験してみることです。私の周りの40代、50代には、「メールと家族間のラインはやるけれど、その他のSNSはやらない」という人がけっこういます。彼ら、彼女らは「X(旧twitter)もFacebookもやらないけれど、どういうものか理解しているからいい」と言うのですが、知っている(知識)とやる(実行)の間には大きな差があります。そもそも、DX推進というのなら、多くの人が普通にやっているSNSはリアルに体験しておくべきではないでしょうか。

無料で新しく作れるメールアドレスはいろいろあります。一つ新しいのを作って、X、Facebook、Instagramなどに登録して、実際に情報を発信してみてください。読むだけなく、「自分から情報を発信する」「ユーザーとコミュニケートする」というのが重要な要素です。3ヶ月程度試してどんなものかつかんだら、アカウントを削除して止めればいいのですから。

「百聞は一見に如かず」と言いますが、見ているだけでなく、やってみてわかることがたくさんあると思います。

クリスマスツリーをイメージしたカクタルのカクテル
クリスマスツリーをイメージしたカクタルのカクテルで乾杯。皆様、イルミネーションが華やかな12月の街を楽しんでくださいね。