【コラム】社会人として役立った・幼少期・青年期の体験 第6回
広瀬光哉(カクタル代表取締役社長・営業強化コンサルタント)
2024年2月5日
荒れた中学での経験も、良い人生経験に
前回は、荒れた中学校の校内暴力を見て辟易していた日々について書きました。つらい時期でしたが、いろいろな人と上手く接していく術と、嫌なものからは距離を置く術を覚えました。また、暴力でしか存在を示せない愚かな人間がいることを知り、暴力を目の当たりにする不愉快な日々に耐えました。目標を決めて、粛々と自分の道を歩む経験もしました。
人生には経験の引き出しの多さが重要だと思いますが、この逃れたくても逃れられなかった中学時代の経験も、貴重な引き出しの一つになっていると思っています。
あくまでも個人的見解ですが、私は小学校から大学まで一貫した教育を行う学校で、似た家庭環境で育った子供たちと一緒に学ぶよりも、卒業と言う節目でガラリと環境が変わり、 全く新しい人たちと接する学校生活の方が好ましいと考えています。長い人生を考えると、新しい経験によって様々な人間に対する免疫がついて、生きやすくなると思うからです。
念願の、暴力のない高校生活が始まる
さて、いよいよ念願の高校生活が始まりました。 高校は県でも上位の進学校に無事入学できました。
最初に嬉しかったのは、付き合いを避けたいと思う雰囲気の生徒が周りに一人もいなかったことです。やっとこれで、暴力の存在を意識せずにクラスメートと対等に付き合える学校生活が始まると考えると、期待で胸が一杯になりました。
そして、迷わずバスケット部に入部しました。高校での思い出とそこで得た財産について考えると、バスケット部でのことが大半になります。 朝は部室に行って練習、昼休みは部室でボール磨き、授業の後も練習。土日も学校に行って練習。毎日、部のメンバーと駅まで一緒に帰る生活でした。夏には合宿があり、仲間と過ごした思い出はたくさんあります。
練習は厳しくて、とても鍛えられました。バスケット部の監督は大学を卒業したばかりの若い先生でした。最初に練習に参加した日の驚きは今でも覚えています。練習中は声の出しっぱなしで、体育館のコートを走り回りました。一つ一つのメニューが濃くて、「これが高校生のレベルなんだ」と痛感しました。
「部員はみな平等」という考え方に感銘を受ける
入部した時に監督から言われてうれしかった言葉があります。それは、「先輩後輩の関係は当然あるが、部員はみな平等に扱う。先輩だからやらなくていい雑用など存在しない。全てを全員でやる。先輩からのしごきなども一切ないので、安心してがんばってほしい」というものでした。暴力で上下関係ができていた中学から来た自分は、監督のこの考え方に感銘を受けました。
確かに、練習前後の掃除もボール磨きも全員でやりました。先輩後輩の仲も良く、先輩に変な怖さを感じずに1年生時代を過ごしました。
やることは平等でしたが、先輩に対しては憧れを抱き、尊敬していました。1年生の自分から見ると3年生はもう大人で、バスケットも各段にうまく、背中を見ているだけで力量の差を感じました。 自分も先輩になったら、黙って背中を見せるだけで尊敬される人間になりたいと思っていました。この感覚が、社会人になった時に「こうありたい」と思った上下関係の基本になっていると思います。
1年生で入部したのは10人でしたが、3年間続いたのは私を含めて7人でした。同じ釜の飯を食った仲間なので仲が良く、今でも定期的に会っています。
パワハラのない環境を築いた監督に感謝
最近、パワハラによる事件をよく耳にしますが、学生時代にパワハラの無い上下関係が守られた環境で育つと、パワハラをするなど考えられないと思います。 悲しいかな、パワハラのある上下関係で育ってしまうと、自分が上になったときに同じことを繰り返すのが当たり前になってしまうのかもしれません。若い人たちは、パワハラの無い中で、良い上下関係・人間関係を築き、グローバルな社会で活躍できる力を付けていってもらいたいと思います。
去年の夏の甲子園優勝校である慶応高校野球部には、1年生から3年生まで、さらに監督との間にも上下関係がないという話を聞きました。監督は、心地よい上下関係の中で実力が発揮できる環境を作り上げ、 新しい体育会系の形を世に示したのではないでしょうか。
バスケット部の監督は佐藤先生といいます。ご指導いただいた3年間、バスケットの技術だけでなく、社会人としての基礎もいろいろと教えていただきました。そして、一生の仲間ができ、先輩後輩との縁もできました。
次回は部活での思い出とそこで得た宝について、少し詳しく書いていきたいと思います。