【コラム】 トップセールスが教える営業スキルの磨き方・育て方 第3回
広瀬 光哉(カクタル代表取締役社長・営業強化コンサルタント)
2022年11月1日

新規コラム第1回は「営業の基本中の基本」、第2回は「新規顧客開拓のための基本」を書いてきました。 今回は営業ターゲットの考え方について書いていきたいと思います。

魂のこもったターゲットリストを作ろう

営業って「行き先」を決めるのが難しい職種です。気持ちを強く持たないと、行きやすいユーザーに足が向きます。しかし、それだけでは自分に割り当てられた営業目標を達成できません。ですから「行き先」を明確に決めて、「一日何件コンタクトする」と覚悟を決めて活動することが大事です。そのためには、魂が入ったターゲットリストを作らないと精神的に挫折してしまいます。 各自がターゲットリストを作って、訪問やコンタクトすることが重要になります。

見込み開拓活動もやらずに、引き合いだけで成績が上げられるなら別ですが。

1.既存市場の顧客開拓リストの作り方

自分が担当する市場を与えられたら、いよいよ顧客開拓です。

最初は自分の担当顧客を知ることから始まるので、既客リストの整備をしましょう。営業支援ツール(SFA)や勘定系データ(売掛金や過去売上データ)や前任の担当者からの引継ぎデータが用意されていたら、工数も随分少なくすみます。
しかし、そうはいかず、いろいろなデータを駆使して既客リストを作らなくてはならないかもしれません。 ユーザー名や住所・電話番号・担当者などの基本データは当然ですが、導入機器・受注した期間の日報データ、担当者や決裁者の状況、競合状況、お客様アンケートの履歴などのデータを整備しておくと、 既客への積極的な管理と顧客満足度(CS)アップが抜かりなくできると思います。
よもや、既客データを整備しないでユーザー訪問するよう雑な営業はしていないですよね。ユーザーは、営業担当者が変わってもちゃんと引継ぎされていて、自分の事はわかっていると思って面談すると思います。ツールやデータが完備されていないなら、次に担当になる後輩のためにも、自分でデータ整備と既客リストの完成をしてください。

あなたが大変な思いをして既客リストを作ったのなら、楽にできる仕組みを会社に提案すべきです。会社も、データが瞬時に作成できない現実があるなら、システムに投資して早急に手を打つべきです。

2.新規開拓のためのターゲットリストの作り方

次は新規開拓のためのターゲットリスト作りです。

その前に市場のマーケット分析をしておかなければなりません。企業数・業種別企業数・年商別企業数・従業員数別企業数を把握しましょう。このマーケット分析で「自分が売り込んでいきたいターゲットはどこなのか」という仮説をたてるべきです。市場の特徴を把握して、営業各自が自分のターゲット層を決めましょう。大きすぎず、小さすぎず、自分の売る商品にあったターゲット層のリストを作りましょう。

新規開拓を始めたら、顧客のデータ化が重要

いよいよ新規開拓です。営業支援ツールを駆使して、それがなければ、自分で新規顧客のデータ化の準備をします。 全ての会社に営業支援ツールが完備しているわけではないので、その場合は手帳やノートに記録しましょう。せっかく訪問したのですから、自分で日報を作って、顕在見込みか潜在見込みかをデータ化しましょう。

顕在見込みなら、見込みのランク付けとランクごとの攻め方を決め、必要なデータ収集の段取りをします。訪問頻度も決めましょう。
ランク付けの精度については、上司にも同行してもらって指導を受けると良いでしょう。 営業として成長するとともに、見込みのランク付けの精度も上がらないといけません。
潜在見込みなら、今後の訪問のタイミングを考え、担当者・キーマンは誰かをつかみましょう。他社機・他社ソフトの使用ユーザーなら、今後聞き出す材料を整理して台本を作り、根気よく攻めていくストリーを考えて実行しましょう。「行き先」リストに加えて、長期未訪問にならないようにしましょう。 訪問したら結果を整理整頓して、分かりやすく記録に残すことが重要です。

会社は、営業を支援する体制を作ろう

今は「足で稼ぐ時代」ではないので、会社は「仕組み・システム」と「行き先」を提供する用意をしなければなりません。
営業支援ツール、Webプロモーション、デジタルマーケティング、コールセンターの強化、営業とプロモーション部隊の一体運営からの見込み客開拓、セミナー・フェアの企画、アカウント営業の強化、真の顧客満足度を高めて紹介ビジネスができるスキーム作りなど、会社が営業支援のためにできることは数多くあります。 リアル営業がしにくくなっているので、営業レス戦略も重要な営業戦略となります。

精度の高いデータを集め、本気の支援を

営業支援ツールを使う場合、上司も部下も同じ温度で、嘘の無いデータを貯めていかないと宝の持ち腐れになります。嘘のデータ、もしくは上司のチェック逃れのための日報データを貯めても全く役に立ちません。 日報は営業自身のために書くものであることを上司が良く理解して、書かれた内容に対して親身なアドバイスをしてもらいたいと思います。
精度の高いデータが多く集まっていると、いずれ、AIからの分析・行き先配信が可能になります。
その他、上に挙げた会社の「仕組み・システム」は、すべて本気で取り組んで、「見込み客開拓と売上向上に結び付けるのだ」と覚悟を決めて構築していくべきです。 仕組みがあれば良いというものではなく、それを使いこなし、有効活用することが大事です。これはなかなか難しいことですが、やれば必ず結果が出ます。

以上、効率のよい営業展開のためにはターゲット作りが非常に大事だということ、それをサポートする会社は、支援体制を作るための投資が必要ということを書いてきました。
時代が変わり営業スタイルも変わってきましたが、コンサルの部分は、ロボットでは対応できません。人間力と教養と知識をしっかり身に付けて、リアルな営業でなくてはできない力を発揮して、優秀な営業に育っていきましょう。

次回からは、有能な管理職になる方法や会社を強くする体制の作り方について書いていきたいと思います。

ススキを見ると、夏が終わったとホッとするとともに少し寂しさを感じます。