【コラム】 トップセールスが教える営業スキルの磨き方・育て方 第2回
広瀬 光哉(カクタル代表取締役社長・営業強化コンサルタント)
2022年10月3日

新規コラム1回目の前回は、ユーザーに満足していただくために営業がやるべきことの「基本中の基本」について書きました。今回は、新規開拓能力を養う、または新規市場に挑戦していく上での基本について書きたいと思います。

新規開拓は、営業力を鍛えてくれる

営業にはルートセールス(既客対応)と新規開拓営業が存在します。私はこの二つの営業スタイルを明確に分ける必要はないと思います。既客の守り及び入れ替えも必要ですし、口座の全くない企業から受注して新しい口座を開拓する営業も必要です。多分任されたマーケットの中では両方の営業をやっていると思います。

ただし、新規開拓は既客対応より厳しく難しいのは事実です。
自分の経験を少し書きます。私は新人で配属された店舗が、初めて千葉県に進出した新しい支店でした。初めての市場の新店舗ですから、すべての訪問先は新規顧客のみです。当時の市場では会社の名前も全く知られていなくて、地場の競合企業がしっかりと地域を抑えていました。
ここで張り切って営業を始めましたが、最初は全く売れませんでした。しかし同時に配属された他の地域の新人たちは売れ始めていました。「なぜ自分だけが売れないのだろう」と悩みましたが、今思えば、他の新人は既客に売れていたのだと思います。
新人営業には厳しい体験でしたが、私はこの新店舗での2年間で、新規開拓のための営業力を身に付けたと思います。その後、都内の既存店に転勤して営業をしたときに「既客から受注を取るのは、新規開拓に比べてこんなに楽なんだ」と実感しましたから。

新規開拓と既客対応は並行してやるべき

都内の店舗に移ってからは、安易に既客受注のウエイトが増えてしまった時期があり、新規や他社入れ替えの受注の苦労から逃げてしまうのではないかと危機感を覚えました。
先輩が作った既客ばかり食ってしまうと市場が狭くなり、再度新規受注を取って市場を肥やさなければなりません。また、次の担当営業のためにも、ぺんぺん草も生えないような市場にしてはいけません。
ここで言いたいのは、新規の顧客開拓は大変だけれど、既客対応と並行してやっていかないと、本当の営業力は身に付かないということです。

新規開拓能力を養うためにやるべき3つのこと

新規開拓の難しさは、提案会社の良さも悪さも全く知らず、当然、信頼関係がないので話を聞いてもらえない相手に対して営業活動を始めるところにあります。一方、既客対応のアドバンテージは、先輩たちが開拓したお客様に新しい商品をPRするところからスタートできることです。

では、新規に強い営業になるためには、何をしたらいいのでしょうか?

これは、既客対応営業にも通用することですので、ぜひやってみてください。前回のコラムで書いた「営業の基本中の基本(自分の営業に信念を持つ、自分の売る商品・サービスを1番に愛する、笑顔を忘れない、身だしなみを整えて第一印象を良くする)」は、できていることが前提です。

1.営業はアーティストであれ

こうすれば絶対に売れるというマニュアルはありません。「こうすれば売れる」というタイトルの本が出ていますが、当たり前の基本が書いてあるだけで、読んでみても何も参考になりません。
自分のテリトリーや受け持ち地区が決まったら、そこは白紙のキャンパスだと考えましょう。どんな絵にするか? どんな色で埋めていくか? 一生懸命自分で作戦を練るのです。誰も教えてくれません。毎日一生懸命作戦を考えて、実行するのみです。作戦・アイデアを考え続ける習慣が大切なのです。
営業戦略の作戦は恋愛と一緒です。その市場はどういう性格なのか? どうしたら受け入れてもらえるか? 何が好まれるか? 競合相手はどんな人か? 一生懸命に考えるエネルギーが大事です。新規開拓していくには、次から次とアイデアを出して、挑戦し続ける事が必要です。

2.営業は映画監督であれ

営業は一人ではできません。ターゲットが見つかったら、映画監督になったつもりで 信頼を勝ち取るべきステージを考えましょう。何を見せたら良いか? 誰を登場させたらよいか? その効果的なタイミングはいつか? などなどです。案件ごとに映画監督になったつもりで、いろいろなストーリーを考え、役者を配置して、ベストな営業を心がけるべきです。

3.競合営業に負けない工夫と演出をしよう

新規開拓の場合、当然ですが既存会社の担当営業が来ています。その営業よりも信頼度で勝らなければ話を聞いてもらえません。そのためには、優秀な、頼りになる、謙虚な営業を演出すべきです。
相手の話をよく聞き、決してしゃべり過ぎないこと。宿題を預かったら必ずお応えし、聞いたことはメモして誠意を全面に見せることです。面倒なことでも率先して引き受け、信頼に応えていかなければ、既存の営業に勝てるわけがありません。
こんなふうに信頼関係を勝ち取る努力をしていけば、競合の土台には必ず乗ることができます。

以上、「新規を取るにはアイデア、作戦、工夫が必要」ということについて書きました。「真剣だと知恵がでる、中途半端だと愚痴がでる、いい加減だと言い訳ばかり」と言います。営業の成功は、自分の本気度にかかっていると思います。

次回は、営業としてのターゲットのつくり方を書いていきたいと思います。

念願の姫路城に行ってきました。重機もない中での見事な建築物で、昔の技術と匠の技に感服しかありません。