【コラム】 製造業の社長に伝えたい![2] 第6回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2022年12月15日
生産設備とインターネットを繫げて、生産性を上げよう
「製造業でもIoTの活用を!」と言われて、5年以上になりますが、未だに十分な活用や普及には至っていません。さすがに、最初の頃と違い、「IoTは改善ツールの一つである」という認識は高まってきています。しかし、うまく活用している企業はわずかです。
では、なぜ普及しないのでしょうか。IoTは、Internet of Thingsの略で、モノのインターネットと訳されています。製造業では、「生産設備とインターネットを繋げることで生産性を上げていくこと」と定義できると思います。
まず、生産設備とインターネットを繫げる体制を整えよう
ここで、IoTの要素である生産設備とインターネットの管理について考えてみましょう。この2つの管理はどこで行っているでしょうか。
生産設備の管轄部門は、社内的には生産技術部門であり、社外的には生産設備メーカーということになります。ただし、小さな会社だと生産技術部門がなく、製造現場に生産設備のメーカー窓口しかないことがあります。
一方、インターネットの管轄部門は、IT(情報)部門であり、社外的にはITベンダーということになります。ここも、小さな会社だとIT部門がなく、総務部門が兼務していたりします。
そこで、生産設備とインタ−ネットをつなげてIoTを推進するためには、社内的には、生産技術部門(なければ、生産設備のメーカー窓口)とIT(情報)部門(なければ総務部門)との連携が必要です。また、社外的には、生産設備メーカーとITベンダーとの連携が必要だということです。この4者の足並みが揃わないと、IoTを推進できる体制は整いません。
1.社内連携チームを作ろう
まず、社内的には生産技術部門とIT部門が連携して取り組むチームが必要となります。
それらの部門がなければ、生産設備とインターネットが分かるキーマンをそれぞれ立てて、ミニプロジェクトを立ち上げる必要があります。
2.生産設備メーカーとITベンダーを連携させよう
次に、生産設備メーカーとITベンダーとの連携が必要です。
ここでは既存の生産設備メーカーとITベンダーに相談しても、連携してきた経験が少ない場合も少なくなく、第3のベンダーを探す必要も出てきます。
生産設備メーカーは、生産設備から稼働情報などのデータを取得する際にメーカー固有のインターフェースと管理ソフトを用意し、その利用を推進することで、顧客の囲い込みを図ってきました。そのため、「インターネットのような汎用的な接続方法には積極的ではなかった」という背景もあり、ITベンダーとの連携に非協力的なメーカーも多く見受けられます。
3.経験のあるITベンダー選定も重要
現在は、生産設備の稼働情報の取り方も進化しています。かつてのように、生産設備に直結したデータを生産設備メーカーのインターフェースや管理ソフトを通して取得するのではなく、生産設備の外部にセンサーを付けて、情報を取得する方法が主力になってきています。
こうなってくると、どのようなセンサーを生産設備につけてデータを取得すべきか、センサーからインターネットへどのようにデータを渡すのか(工場内では、生産設備の関係で無線LANではうまくデータが転送できない場合も多いのです)が重要になり、無線通信技術を持つメーカーとの連携が必要になります。
これらのことに対応できるITベンターは限られてきますので、経験のあるベンター選定が重要となります。
このように、社内・社外の4者を連携させて、IoT推進体制を確立させましょう。
主力設備の稼働率の見える化を実施しよう
次に、IoTをどこから進めるべきかについて考えたいと思います。私は、まず「主力設備の稼働率の見える化」を実施すべきだと思います。
IoTを導入して稼働率の見える化ができた会社が、「想定していた稼働率よりも相当低い(悪い)ことに気付く」という例が本当に多いのです。「IoTを導入前は80%くらいと思っていた稼働率が、実は60%から70%だった」という話をよく聞きます。これがわかっただけでもIoTの効果があったと言えます。
稼働率が低いことがわかったら、原因を分析しよう
せっかく稼働率が見えたのであれば、稼働率の低さの原因を分析しましょう。
なぜ主力設備が停止するのでしょうか。ここは、さすがに自動的に未稼働や停止の理由は取れないので、現場で停止理由を入力する必要があります。
そこで、タブレットなどを使って、ワンタッチで停止理由が入力できるようにします。そうすることで、停止理由ごとの停止時間などがわかるようになり、対策を打つべき項目が明らかになってきます。
ここまでくると、さらにIoTの活用範囲を増やすことができるようになってきます。よく活用されている事例としては、光センサーや電流センサーを活用して、停止したら管理者にメールが送信される使い方(稼働監視)や、温度センサーなどを活用して、閾値を超えたら管理者に通知が送られる使い方(稼働停止の予兆管理)などがあります。
IoTの導入で、生産性向上が可能に
このように、社内・社外のIoT推進体制を整え、主力設備の稼働率の見える化が実現できたら、ステップ・バイ・ステップでIoTの活用範囲を広げていきましょう。そうすれば、間違いなく生産性向上につながるIoTの導入が可能となり、その効果は絶大です。
ぜひ、地に足のついた進め方を実践していただき、IoTを有効な改善ツールとして、活用していきましょう。