【コラム】 製造業の社長に伝えたい![2] 第4回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2022年10月17日
見える化だけでも大変です
原価の見える化ができていないところが本当に多いですね。特に労務費は捉えづらい。材料費も最近は変動(高騰)が激しくなっており、外注費も新図面は単価評価が難しいところです。今回はこの3つの「見える化」についてお話しします。
労務費の見える化
労務費がとらえづらいのは、作業時間を正確にとらなければならないところですね。日報だとまるまってしまう(15分単位とか、30分単位での報告時間になってしまう)。かといって、現場に正確な作業時間の報告を求めるのはけっこうハードルが高い。そこで、IT機器を活用しようとするところが多いですね。
現場端末の設置
いち早く取り組まれたところは現場端末を設置して、作業開始時に作業開始ボタンを押し、作業終了時に終了ボタンを押して作業時間を収集しています。しかし、なかなか高価でもあるため、中小製造業では導入が進みませんでした。
ハンディターミナル
その次に導入が進んだのは、ハンディターミナル。持ち運びやすく、複数の人、複数の機械でも兼用ができる点などがメリットです。しかし、専用機なので、そこそこのコストがかかる点がネックでした。
タブレット
そして現在、安価で注目されているのがタブレットです。油よごれや落下に弱いなどの課題もありますが、ソフト開発がしやすい点も魅力です。
IoTとの連携
また、IoTと連携し、人を介さず、機械から直接時間をとる考え方などもこの数年注目されています。
ただし、機械作業の前後の人の作業は時間の収集ができないので、タブレットが兼用で必要となります。
フック型センサー
最近では、フック型センサーを使って作業時間を記録する仕組みがあります。まず、製造指示書に印字された製造指示番号(QRコードやバーコード)をリーダーで読み込み、それをバインダーに組み込んだNFCカードに書き込みます。次に、そのバインダーに紐付いている製造指示書を挟み、現場に持っていきます。そして、機械や工程ごとに設置したフック型センサーにそのバインダーをかけると作業開始、フックから外したら作業終了が記録されます。これは、人の作業(動線)と整合性が高い方法なので、うまく活用したいものです。
材料費の見える化
最新の単価情報をシステムに反映
材料費は、単価が固定の場合は比較的簡単にとらえられます。最近のように変動が激しい場合は、「いかに最新の単価情報をシステムに反映させるか」という点が問題となります。「システムに登録されている材料の標準単価マスターが古くて、それをもとに見積もったところ、赤字になってしまった」という声をよく聞きます。
材料費の変動が激しい時期は、材料メーカーのホームページで日々更新される材料単価をシステムに日々反映させるなど、少し踏み込んだ対応が必要となります。
外注費の見える化
AI類似図面検索機能の活用
最後に外注費ですが、過去実績のある部品などを頼む場合は、過去単価をそのまま利用可能です。
一方、今回初めて依頼する部品は、図面を渡し、個別見積をしてもらい、その見積を評価するプロセスが必要です。この場合、過去に似たような部品をいくらで作ってもらったかが参考になるものです。
それでは、過去に依頼した、似たような部品の図面と見積はどうやってみつけることができるでしょうか。
「過去の図面の外注先や製作時期の見当をつけて1枚1枚探す」などという非効率な方法がけっこう行われているのです。それでは、部品ごとにその設計仕様を分類分けして、各属性を整備し、その属性が近いものを検索できるようにしておいてはどうでしょうか。しかし、このようなデータ整備は、相当な覚悟と時間がないとできません。
そこで、最近注目を集めているのが、AI類似図面検索機能です。一瞬で数万の図面から類似率の高い順に図面を検索することが可能になってきました。最近ではサブスクで利用できるサービスも出てきていますので、こちらもチェックが必要です。
いくつもの難関を超えて上記3つの「見える化」ができれば、ようやく「原価の見える化」の環境が整います。
しかし、原価は、集計しただけでは意味がありません。その原価が想定したものに対してどうだったのか、高かった場合はなぜか、また、更なる原価低減をするためにはどうすればよいか、そこに着手しなければ、まだ、道半ばなのです。この点については、次のコラムでお話したいと思います。