【コラム】製造業の社長に伝えたい! 第9回(最終回)
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2022年6月16日(木)

導入目的が実現できているか、検証しよう

幾多の山を越え、ようやく稼働にこぎつけると、「やれやれ」という心境になります。このころになりますと、いつの間にか稼働させることが目的になってしまっていることがあります。
しかし、ここからの取り組みによって導入効果に大きな差が出ますので、再度、導入の目的に立ち返り、「目的が達成できているか」を検証することが非常に大切になります。

例えば、在庫削減30%を導入目的としていたのであれば、「在庫は何%削減されたのか」を検証するのです。目論見通り、達成できていれば、導入成功ということになります。そうでなければ、なぜ、削減できなかったのか、原因を追究する必要があります。

在庫マスターの最低保有在庫数は適正?

在庫は「見える化」されて、正確な在庫がいつでも把握できるようになったが、在庫は目標通りに減っていない、というケースがよくあります。

原因を追究してみると、在庫マスターの最低保有在庫数が適正でなかったということがあります。最初に安全を考えて多めに設定したものが本稼働後もそのままになっていて、実勢に即して見直していなかったため、在庫を多めに持つような運用になっていたというわけです。
このような場合は、本稼働後に逐次、在庫の状況に合わせて在庫マスターの最低保有在庫数をメンテナンスして、在庫を適正に保つ必要があるということです。

目標が達成できない理由は何?

次に原価低減10%を目標に導入した例を見てみましょう。

原価はリアルタイムに見えるようになり、収支がすぐわかるようになった点では、導入の効果がでました。しかし、実際の原価低減率では10%という目標を達成していないケースを多く見かけます。
原価が見え、予定原価より多い場合は、「何が多いのか」「なぜ多いのか」という課題を分析し、対策を打つ必要があります。

例えば、材料費が想定以上にかかっているとしたら、その理由を分析します。原材料が高騰したのか、製造上の歩留まりが悪くなったのか、などなど原因を分析し、対策を検討します。労務費が上がっていれば、なぜ、工数が増えているのかを分析し、対策を検討します。

データの見える化、「見えたらどうするのか」が大切

生産管理システムが稼働し、今まですぐに見えなかったことが見える(いわゆる見える化)ようになったら、次に何をするかが大きなポイントです。

生産管理システムの導入目的が達成されているかどうかを検証することから、システムを利用した本当の改善活動が開始します。

データの見える化

そう、ここからが「カイゼン」の始まりなのです。

ここで留意しておくべきことが、二つあります。

一つは、導入プロジェクトは解散せず、カイゼンプロジェクトとして継続することです。

だいたいは忙しいメンバーで構成されていることが多いため、本稼働を確認するとプロジェクトは解散してしまいますが、導入プロジェクトをカイゼンプロジェクトに発展的に改組して、維持していくことをお勧めします。

もう一つは、「導入効果の評価⇒改善」を効果的に実施するために、定例会議を開催することです。

経営トップにもご参加いただき、会社としてオフィシャルなプロジェクトとして根付かしていくことをお勧めします。稼働してから3ケ月、半年、1年と定期的に開催していきたいものです。そうすれば、高いIT投資の何倍もの効果を手にすることができるのです。

以上、導入前、導入中、稼働後と生産管理システムをうまく活用するポイントを9回に渡って、お話ししてきました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。みなさまの会社における生産管理システム導入の大成功を心よりお祈りいたします。

次回からは、生産管理システムの導入で改善したい「業務」ごとに、どんな落とし穴があるのか、よくある事例を交えながら、お伝えできればと思います。

2022年の山行初めは尾瀬
今年の山行は尾瀬からスタート、水芭蕉が見頃を迎えました。