マスター整備を乗り越えてこそ、成功の道が拓ける
生産管理システム導入の最大の山場はマスターの整備です。
これがきちんと整備できれば、いろいろなことが自動化されます。在庫や受注状況から、生産計画が自動立案されたり、発注データが自動生成されたりします。
つまり、経験者が何時間もかけて手作業で行ってきた業務を瞬時に実行することができるのです。
そのためには、自社の製造や購買に関する基準データ(つまりマスター)を整備する必要があるのです。
どのようなマスターがあるか見てみましょう。
製品構成のマスターには、整品構成するユニット、部品、部品を製造する材料などがあります。
このマスターの整備には、設計部門が作成している部品表や部品を製造するために必要な材料情報を生産技術に確認する等々の作業が必要です。
購買関係のマスターには、材料の発注ロット、単価、リードタイムなどがあります。仕入先や外注先に再確認が必要なものもあるでしょう。
工程関係のマスターには、工程、標準時間、手順などがあります。このマスターの整備には、製造基準書や実測値、日報のデータなどからデータ収集する必要があります。
いざ整備しようとすると、なかなか穴埋めのできないマスター項目が出てきます。社内、社外に分散している、あるいはベテランの頭の中にあるデータを収集して、登録する必要があります。
これらは、膨大な作業となります。まさに生みの苦しみです。
チーム対応で生みの苦しみを乗り越えよう
生産管理システムの導入に成功している企業は、この困難を乗り越えてきています。
主担当となった生産技術や生産管理、製造部門の担当者は、「数ケ月土日返上」などの並々ならぬ努力の上にマスターの整備をしています。「マスター整備が大変だった」「本当に苦労した」等の逸話は、枚挙にいとまがありません。
一方、ここでつまずくケースも散見されます。マスター整備の担当者は忙しい部署にいることが多く、なかなか時間がさけず、半年、一年かかっても整備ができない、そのうちにほこりをかぶってしまうというケースもあります。
ここでも、特定の担当者が責任を負うのではなく、マスター整備チームを作って、複数の担当者チームで対応していきたいところです。
マスター値を見直して、メンテナンスする体制も重要
さらに、マスターの整備はここで終わりではないことを付け加えておきます。生産管理システムが稼働した後も、常に、マスターの値が正しいのか、見直していくことが大切です。
例えば、A部品の購入リードタイムを、他の部品と同様、一律2週間と登録したとします。すると、生産管理システムは、その部品が必要となる2週間前になると注文データを自動作成し、発注します。
その後、A部品到着の1週間前になって受注や生産計画が変更になるとどうなるでしょうか。
A部品の必要数<発注数になる場合は、在庫が増えてしまいます。逆に、必要数>発注数になると不足してしまい、緊急手配したり、他で発注しているA部品があれば融通するなどの緊急対策が必要となるわけです。
ところが、当初は余裕を見て2週間で登録していたリードタイムも、実際は注文して1週間で入ってくるとしたらどうでしょうか。
少なくとも、1週間前に発注すればよいので、上記のような1週間前の必要数の変更にも十分対応できることになります。
そのためには、当初2週間と登録していたA部品の購入リードタイムを1週間に変更する(見直す)ことか必要となります。
「在庫がこの数を切ったら発注する」という基準(最低在庫保有数)なども全く同じことです。
はじめは欠品のリスクを避けたいので、多めに設定します。そうすると、その分在庫を持つことになります。実際に稼働させてみて、そこまで必要ないことがわかれば、安全在庫数を少なく設定し直す必要があります。このことによって、保有しておくべき在庫数は減っていくわけです。
生産管理はマスターが命です。生みの苦しみを乗り越える体制、そして常に実情に近いマスター値に見直してメンテナンスする体制を整えましょう。