【コラム】在庫改善をするなら、ここに注目 第3回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2026年5月18日
前回まで、在庫金額の適正とは何か、過剰在庫はなぜ発生するのか、などについて考えてきました。
今回は、生産管理システムなどのDXツールが過剰在庫削減にどのような効果を発揮するのか、また活用する上で、どのような点に留意すべきかについて触れてゆきたいと思います。
今回も生産形態ごとに見てゆきます。
受注生産の場合
手作業による手配の問題点
例えば、生産設備製造業のような受注生産の製造業では、設計部門から購買部門に生産に必要な部品リストが来ると、組立生産に入れるように、まず発注をかけて部品の確保に努めます。
その中には、発注すれば1ヶ月で入荷する部品もあれば、発注しても半年以上入荷しない部品もあります。例えば、あるユニットの組立工程が3ケ月後に予定されており、そこで組み付けに必要なa部品とb部品があったとします。a部品の発注リードタイム(発注してから入荷するまでの期間)は3ケ月、b部品の発注リードタイムは1ヶ月であった場合、a部品はすぐに発注しないといけません。
一方、1ヶ月で入荷するb部品については、2ヶ月後に発注しても間に合います。ところが手作業で発注していると、いちいち分けて発注するのが手間となるため、a部品もb部品も一緒に発注してしまいます。
納期はどちらも3ヶ月後ですので、問題ないはずですが、発注リードタイムが1ヶ月のb部品が、納期を待たずに早く入荷してしまうことがよくあります。例えば1ヶ月後に入荷されてしまえば、その後2ヶ月間は使用しませんので、無駄な仕掛在庫となってしまいます。購買部門では欠品や納期遅れには細心の注意を払いますが、指定納期よりも早く入る部品については、その後の製造納期に影響しないため、特に問題としてとらえないことも多くあります。
これが過剰在庫を発生させる一つの理由です。
また、上記のケースで、仮に、顧客からの仕様変更が2ケ月後に発生し、設計変更により、b部品が必要なくなり、代わりにc部品が必要となった場合、すでに入荷済みのb部品は不良在庫となってしまいます。この観点からも、手間ではありますが、各部品の発注リードタイムに合わせて、分割して発注したいところです。
生産管理システムの効果は絶大
それでは、生産管理システムを活用するとどうなるでしょうか。
必要となる時期(各工程の着手タイミング)と部品ごとの発注リードタイムを登録しておくと、製品納期から逆算して、発注するタイミングを可能な限りぎりぎりまで引き付けて発注する、つまり、前述した部品の納期ごとに分割して発注することを、生産管理システムが自動的に実行してくれるわけです。
人手に頼らず、余計な仕掛在庫を持たない仕組みが構築されるのです。この効果は絶大です。
生産管理システムを活用する上での留意事項
さて、一方で留意すべき点を押さえておきたいと思います。
発注のタイミングをコントロールしてくれる各部品の発注リードタイム。この発注リードタイムが正しい期間に設定されているかが確認のポイントです。
なぜならば、当初、生産管理システムを導入した時点では、仕入先との発注リードタイムに関する取り決めが、多少おおまかであったりするケースが多いものです。そのため、不明な場合などはどうしても欠品リスクを考えて、多少余裕を持った期間(つまり少し長めの期間)になっていることが多いのです。ここの見直しを定期的に行えるかがポイントです。
このリードタイム見直しの業務を担当するのは、通常、購買部門となりますが、非常に多忙なセクションであり、欠品や納期遅延などの納期管理に忙殺されてしまい、ここまで手が回らないケースも多く見かけます。そのため、購買部門の業務における発注リードタイムの見直し業務の優先度を上げるために、例えば、仕掛在庫や不良在庫の削減目標などを部門目標に設定して、その成果を購買部門の評価軸にするなど、動機づけへの配慮が大切です。
部品の標準化設計への取り組み
少し話はそれますが、生産設備製造業などの受注生産の製造業では、重要部品(キー部品)が長納期で、発注してもなかなか入ってこないことが大きな課題となっています。
極端な話ですが、1,000点の部品でできている機械装置があったとして、999点の部品が揃っていても、1点の部品が欠品すれば、製品は出来上がりません。そこで注目されているのが、部品の標準化設計への取り組みです。これは、設計段階から入手困難な特殊部品を極力使用せず、標準部品の組み合わせで求められている製品仕様を満たすように設計してゆく取り組みのことを指しています。
このことにより、納期がかからない標準部品が手配でき、短納期化を図ることが可能となります。また、他製品とも部品が共通化できれば、在庫を持って対応することも可能となり、ロットで買うことで調達コストを下げることも可能となります。
標準化設計・共通化設計は簡単なことではありませんが、QCDへの効果は絶大であり、標準化設計プラットフォーム構築するDXツールなどを活用しながら、ぜひ取り組んでいただきたい改善テーマです。
見込み生産の場合
販売計画の精度がカギ
一方、見込み生産の場合は、繰り返し同じ製品を決まった部品構成で生産するため、製品・中間品・部品それぞれの在庫と見込み状況や生産予定を勘案して、在庫を適正に保つ必要があります。
例えば、製品であれば、現在庫に対して、受注状況や今後の販売計画を加味して、製品の在庫計画を満たすように生産計画を立案する必要があります。生産管理システムを活用すれば、受注データや販売計画を投入すると自動的に生産計画数を立案してくれます。
Excelでも不可能ではありませんが、在庫情報・受注情報・販売計画情報を時系列で一元管理できる点で生産管理システムは優れています。
しかし、生産管理システムを利用してもネックとなるのが、システムに投入する販売計画データの精度そのものです。販売計画は、システムの外側で作成しなければなりません。過去の実績や営業の販売計画をもとに作成しますが、最後は経験や勘に頼らざるを得ない分野でもあります。ここの精度が高くなければ、作り過ぎたり、欠品したりします。
最近では、AIを活用して販売予測をするソフトも出てきていますので、活用も考えたいところですが、これらを活用しても最後は人間の判断となります。
部品発注管理における留意点
製品の生産計画数が決まると、中間品や部品の在庫を見ながら適正に発注数をコントロールして適正在庫を保つ必要があります。
ここは管理対象となる部品点数が格段に増えますので、手作業ではなかなか困難となり、生産管理システムがもっとも威力を発揮してくれるところです。各部品ごとにいつ・いくつ必要となるかを計算し、在庫を勘案して、いつの納期でいくつ手配したらよいかを自動的に計算し、発注書を作ってくれます。
ここでも注意すべき点があります。
受注生産でも触れましたように、発注リードタイムの設定および見直しが適正にされていることが前提となります。さらに、発注ロットや安全在庫数の見直しなどが重要になります。発注ロットについては、発注単価の関係で必要数より多めに手配するケースもあります。
ただし、在庫の有効期限の観点から不良在庫・過剰在庫が発生しないように配慮する必要があります。また、安全在庫については、在庫リスクを考えて当初の設定が多めになっていることが多いので、ここもしっかり見直す必要があります。
こちらも、忙しい生産管理部門や購買部門に部品在庫削減目標を設定するなどして、発注ロットや安全在庫数の見直しが定期的に実施されるような動機づけが有効です。
生産管理システム、標準化設計プラットフォーム・AI需要予測などのDXツールを活用する上での留意点に十分配慮いただき、その力を上手に活用して、過剰在庫削減に取り組んでいただきたいと思います。
