【コラム】在庫改善をするなら、ここに注目 第2回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2025年11月10日
過剰在庫とは、製品だと、売れる数より、多く作ってしまった。原料や材料だと、使う予定より多く買ってしまった。
という状態。
では、なんでそんなことが起きるのでしょうか。
受注生産と見込み生産では事情が違う
第1回目のコラムでも触れたように、受注生産と見込み生産ではだいぶ様子が違います。
受注生産の場合は、基本的に受注が来てから原材料を手配し作り始めるため、仕掛在庫にはなってもいずれ使われるものを在庫とします。最少発注ロットの関係で、使用する原材料の量よりも多く買わなければならないものは、不要な在庫が増えるリスクがあります。
また、製造期間が長い産業機械などは、(製造するのに)必要な部品でも、実際に使用するまでに時間を要するケースでは、早く買い過ぎると在庫になっている期間が長く、キャッシュフローに影響を与えます。
さらに、最近多い長納期部品(納期が半年以上)の場合は、受注が来てから発注しても製造納期に間に合わないため、先行手配を行うことがあります。この場合、設計変更や仕様変更により使わなくなると、不良在庫になってしまいます。
一方、繰返生産の場合は、販売予測の精度が低かったり、欠品リスクを考えて多めに製造してしまったりすることにより、製品在庫が過剰になることがあります。
また、原材料でも、リードタイムが長いものや購入単価を下げる目的で必要数よりも多く発注する場合、在庫が過剰となる傾向があります。
欠品リスクと在庫責任
受注生産であれば、「原材料がなければ、納期通りに作れないリスク」、繰返生産であれば、「注文が来ても製品在庫がなければ、失注してしまうリスク」、どちらも欠品リスクが存在します。
ただし、実態としては、受注生産では、多少早めに部品在庫を確保したり、使用数よりも多めに部品を在庫しても、欠品リスク回避=納期最優先の名のもとに、過剰在庫に対する責任は問われないケースが多いです。
一方、繰返し生産でも、販売機会損失を避けるために過剰在庫が生じることがありますが、その責任も不明確なことが多いのです。
このあたりに、過剰在庫に対する真因があると考えられます。
欠品リスクとどう向き合うか
では、単純に責任体制を明確にすれば解決するのでしょうか。
リスクのないビジネスなど、そう存在するものではありません。しかし、全く管理しなければ、過剰在庫はなくなりません。
重要なのは、会社としての戦略や判断基準を整理し、責任体制を明確にすることです。
例えば、受注生産の場合であれば、確実に納期が守られる部品については必要以上に早めに購入しないルール、必要以上に多く買う場合は在庫リスクを考えた発注判断基準(多少高くても少ないロットで買うなど)を整理して、金額によっては上長承認を必要とするなどのルールの整備が必要です。
一方、繰り返し生産の場合の製品製造数については、品目ごと過去実績に対する今後の見通し(販売計画)の承認ルールを設け、予想が難しい新製品(戦略製品)などについては役員承認のもと戦略的に生産するなど、ルールと責任体制の整備必要です。
あなたの会社では、在庫に対するルールと責任体制の整備、機能していますか?
