【コラム】在庫改善をするなら、ここに注目 第1回
酒田 裕之( 生産管理コンシェルジュ )
2025年6月23日
ここ数年、実際の生産管理システムや購買管理システムの導入支援を通して「在庫改善」に取り組む中で、気が付いた事をいくつかお伝えしたいと考え、久しぶりにコラムを再開することにしました。
在庫=お金、いくら持っていると適正なのか
昔から、「在庫はお金」と言われています。しかし、モノに変わってしまうと中々実感がわかないものです。
例えば、在庫金額が3億→5億に変わるとどうなるでしょうか。増加した2億を銀行からお金を借りて調達した場合、最近の銀行金利が2%と考えると、2億×2% 、つまり、400万/年間の金利負担が多くかかります。利益率40%の会社であれば、1,000万の売上に匹敵します。また、倉庫を借りているとすると、その保管料などもかかってきます。あらためて、「在庫=お金」であることが実感されますね。
それでは、在庫はどれだけ持っていると適正なのでしょうか。あらためて聞かれると、以外に明確に回答できなかったりします。
在庫はお金そのものなので、無駄にならないように、少なければ少なすほどよいと言えます。しかし、お客様が必要とするタイミングで製品を提供するには、一定の在庫を持っておく必要があります。それでは、どのくらいの在庫を持っておけばよいでしょうか。
在庫保有基準を決め、キャッシュフローの改善を
在庫を管理する指標として、在庫回転日数(在庫金額/年間売上原価×365日で計算します)という指標があります。これは、現在の在庫が何日で使い切るかを表しています。同じ製造業でも業界によって違ってきますが、短いところだと1ケ月~3ケ月分、長いところだと半年以上というところもあります。これは、お客様が必要とするタイミング(希望納期)と、製造してお客様に提供できるようになるまで期間(製造リードタイム)の差に起因しています。
例えば、産業機械のように希望納期が半年で、製造納期も半年の場合、注文をいただいてから材料や部品を手配しても間に合うので、ほとんど在庫は必要ありません。逆に、化粧品のように、店舗に買いに来た時が欲しい時だとすると、希望納期が0ケ月となります。製造リードタイムが原料調達も含めて6ケ月だとすると、最低6ケ月分は在庫を持っておかないといけない、ということになります。
極端な例で説明しましたが、このように、業界によって在庫を保有しなければならない状況が異なります。業界別の平均的な在庫回転日数は、一般社団法人金融財政事情研究会より発行されている「業種別審査辞典」に掲載されている業種別経営分析表などが参考になります。
また、上場を目指しているのであれば、同業同規模で既に上場している会社が公開している「財務諸表」が参考になります。これらの情報を参考にしながら、自社の在庫保有基準を策定されることをおすすめします。
さらに、運転資金のキャシュフローの改善を考える場合は、この在庫回転日数と売掛回転日数を足して、買掛金の回転日数を引いた「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」という管理指標を目標値とするケースなどがあります。
在庫改善には、まず、適正な在庫改善目標値の設定が必要
いずれにしても、在庫改善には、現状の在庫状況が経営上どのような状態であるのかを知ることが必要です。次に、適正な改善目標値を設定して、毎月改善状況を追いかけていくことが大切です。
あなたの会社では、改善可能で適正な目標値が設定できていますか。
