【コラム】三月ウサギのDX談義 第4回
2024年3月21日
IT化とDXの大きな違いは「目的」
寒い冬も終わり、春になりましたね。木々の芽吹きを見ても、新しいことが始まるエネルギーが感じられて、好きな季節です。
そんな3月、桜の咲くのを待ちつつ感じるのは、ITは私たちの仕事や生活に「変化と成長」をもたらす要因となるなあ、ということです。私はスマホやパソコンを新しくすると、自分もパワーアップした気分になってワクワクします。
このようにIT機器は昔も今も進化し続けていますが、なぜ、最近はIT化よりもDXが推進されているのでしょうか。
ここでちょっと、IT化とDXの違いについて、おさらいしてみました。
IT化の目的は「業務の効率化」
IT化とは、IT(情報技術)を使って、業務プロセスを効率化することといえるでしょう。具体的には、コンピュータとネットワークを使ったIT技術を駆使して、これまで手作業でやっていた業務を自動化したり、紙の書類をデジタル化したりすることです。この結果、業務の効率化、迅速化が実現します。
社内の各業務の自動化、デジタル化が進むと、業務プロセス全体も自動化できるようになり、業務の効率化は一段と進みます。
DXの目的は「ビジネスの変革」
DXとは、ITを含むデジタル技術を使って、ビジネスを変革し、新しい製品やサービスを生み出すことを目的とし、その結果、企業競争の優位に立つことを最終目的とします。
こうして見てくると、IT化はDXに欠かせない要素であることがわかります。紙書類のデジタル化、業務の自動化、業務プロセス全体の自動化が進んでこそ、それらのデータを分析して、顧客のニーズを知ったり、自社の製品やサービスの問題点をつかんだりすることができ、ビジネスの変革へと舵を取ることができるわけですから。
データ処理能力の進化がDXを後押し
次に、ITからDXへと言われるようになった背景ですが、これにはデータ処理能力の進化があります。
「DXという言葉をよく聞くようになったのは、2008年に経済産業省が『DX推進ガイドライン』を出してから」という話を1回目のコラムで書きました。この時期からDXが注目されるようになったわけですが、その後に企業がDXを進めた理由は、ITのデータ処理能力が進化したからです。
ここで、処理能力の進化についても、歴史を振り返っておきます。
1G
まず、1Gの時代。Gは世代(Generation)の略で、1G(第一次世代)は無線通信による音声通話です。
2G
2Gは1993年に通信方式をアナログからデジタルに変化させたことから始まります。携帯のデータ通信サービスが可能になり、メールやWebの利用が広がりました。
3G
3Gは2001年に登場しました。電波効率の上げ方に新技術を採用するなどの技術革新により、通話性能が向上。画付きメールを送ったり、モバイル用サイトを閲覧したりができるようになりました。
4G
2012年からは4Gの時代。大きな技術革新はありませんが、大容量・高速通信のレベルが上がり、映像視聴、ゲーム、各種アプリがサクサクと動くようになりました。
5G
そしてこれからは5Gの時代と言われています。5Gに求められている3つの条件は「超高速大容量」「超高信頼低遅延」「超大量端末同時接続」で、これらを満たすデータ処理能力があれば、自動運転、無人店舗、スマートシティなどが実現でき、社会に大きな変化をもたらすことができます。現在はまだ、この3条件を満たす5Gは提供されていませんが、この提供を見据えて、企業は準備を進めています。
5G時代を見据え、デジタルデータを蓄積
先進企業がDXを推進する理由は、5Gのデータ処理能力を利用して、企業競争力をつけたいと考えているからです。
そのためには、データ分析の基になる社内情報や顧客情報などが、デジタルデータとして蓄積されている必要があります。ところが、IT化さえ進まず、紙情報が紙情報のまま保存されている企業がまだ多数あります。紙情報のデジタル化、手作業でやってきた作業のデジタル化こそ、ビジネスの変革を目指すDX第一歩だと思います。これが、私が「DXの優先事項は記録のデジタル化」と言う所以です。
本格5Gの未来を楽しみに、DXを推進しよう
現在の「超高速大容量」5Gでも、多岐にわたる社内データを一括管理したり、様々な切り口で分析したりすることは可能になっています。そこから、自社製品・サービスの問題点を浮き彫りにし、経営分析をすることもできます。小売業ならば、ビッグデータと言われる顧客の購買データを、各種クレジットカードを通して獲得・処理できるようになったので、クレカ決済を推進して、消費者動向を正確につかんで、品揃えができるようになりました。
しかし、本格5Gの到来は、社会の仕組みをもっと大きく変えるような可能性を秘めています。その未来を楽しみに、今後の企業の発展のために、DXの推進に取り組んではいかがでしょうか。