【コラム】65歳からの挑戦──第二の人生を切り開く起業物語 第1回
広瀬光哉(カクタル代表取締役社長・営業強化コンサルタント)
2025年5月20日
会社の成長と拡大を肌で感じた日々
65歳で起業して、現在で5期目になります。このコラムでは、「なぜ、今さら起業するのか?」という葛藤と不安に向き合った起業当時の日々を振り返りながら、私の「第二の人生」について綴っていきたいと思います。
1979年に大学を卒業し、某IT企業に就職しました。今では少し珍しく感じるかもしれませんが、2011年に取締役となり、2021年に65歳で任期満了を迎えて退任するまで、同じ会社で42年間勤めました。ただし、その間にさまざまな支店、営業部、部門本部を経験し、転勤も何度もありましたので、まるで何社も転職してキャリアアップしてきたかのような感覚でした。私は営業部門に長く携わってきました。常に厳しい状況の連続でしたが、会社の成長と拡大を肌で感じる、エキサイティングな日々でもありました。
大目標を達成、第二の人生を考える
60歳を過ぎた頃、会社に貢献するために長年の目標であった「自分が預かっている部門を収益ナンバーワンの部門にする」「売上1,000億円を超える」を達成することができました。
しかし、そこから先の大きな目標を見失い、日々の業務に追われている自分に気づいたのです。そこで、より強い組織を作るためにも、そろそろ次の世代にバトンを渡すべきだと考えるようになりました。幸い、信頼できる後輩たちが多く育ってくれていたこともあり、安心して次のステージへ進む決断ができました。
退任後の進路について考えたとき、他社の顧問や社外取締役といった選択肢も浮かびました。しかし、他社にお世話になるくらいなら、いっそ大好きだった自社に残る方が納得できる─そう思ったのです。そして、最後に頭の中に浮かんだのが、「起業して、第二の人生を切り開く」という全く新しい道でした。
迷いを乗り越え、やってみたいことに挑戦
私の場合、昔から「起業したい」と強く思っていたわけではありません。ただ、42歳頃から大きな部門の責任者となり、いわば「ひとつの会社の社長」としての経験を積ませてもらったことで、次第に「次は本当に自分の会社を持ちたい」という気持ちが芽生えていきました。それが本格的に形になったのが63歳の頃です。
「今さら起業してリスクを取るのか」「残りの人生は長いのに資金を減らしてどうするんだ」「何歳まで続けられると思っているんだ」─そんな否定的な声もありました。でも、私自身、思い立ってからまだ日も浅く、新鮮な気持ちのまま2年間を過ごせたことが、結果的に起業への勢いにつながりました。リスクは確かにありますが、やってみなければわからない。そして、人生は一度きり。周りには「少しだけやらせてください」という思いで起業に踏み切ったのです。
65歳で起業して、歳を重ねたからこその強みがあることも実感しました。年齢を重ねたからこそ得られた豊富な経験や体験があります。子育てがひと段落していたことも、起業というリスクを取る後押しになりました。中でも一番ありがたく感じているのは「人の和」。人とのつながりや人脈のありがたさです。この辺りについては、次回の「起業までの道のり」で、詳しく綴っていきたいと思います。
第二、第三の人生で新しい目標を見つけたい
人生100年時代。60代の定年は、むしろ「第二の人生の始まり」だと思います。そして、真の意味での定年は80歳。その先にあるのが「第三の人生」だと私は考えています。
これからも健康に気をつけながら第二の人生を全うし、第三の人生が見えてきたら、また何か新しい目標を見つけて挑戦したい──そんな思いで、日々を過ごしています。このコラムが、同じように第二、第三の人生を考えている方の参考になれば幸いです。次回は「起業までの道のり」「どのようにビジネスを始めたか」を書いていきます。
